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読書亡羊

気ままに読書、気ままな読書日記

山田順『資産フライト 「増税日本」から脱出する方法』 (2011)

陳腐な教育論と愛国心の議論がまったくの蛇足 2011年刊行。 本書は、富裕層から一般の人まで資産を海外に移す動きが加速している現状を紹介している。 資本逃避は2009年の民主党政権が誕生したころから増え始め、東北大震災以降さらに増加しているそうだ。し…

ウォール街の悪夢

神谷秀樹『強欲資本主義 ウォール街の自爆』 (2008)金融の本来あるべき姿とは 2008年刊行。リーマンショックを受けて出版された本。 2007年前後から投資銀行家によるPrivate Equity Fundが、世界の金余りを背景として巨大化した。このPEファンドは、Wikipedi…

私のアトピー闘病記 その2

そこで訪れた二件目。 また症状をさっと見ただけで、荒れてるようですね~ステロイド出しておきますね~で終わりになりそうだったので、あわてて質問した。 「先生、私の症状はいったい何なんですか。アトピーなんですか?」 「う~ん、そうだねぇ。。。 ア…

私のアトピー闘病記 その1

私は、高校に入学した頃くらいから、アトピー性皮膚炎を発症した。成人アトピーは治りにくいと言われているように、私の場合も長年この症状と付き合い続けている。もちろん現在でも。 最初に診察に行った町医者は、症状をさっと見ると、「じゃあステロイドを…

美しいドイツ語

ドイツ語、ではなくて、独逸語と表記していた時代。独逸語は非常に響きの美しい言語とされていた。 ゲーテ、ヘルマン・ヘッセ、ハインリヒ・ハイネ……多くの詩人を輩出し、ワーグナー、メンデルスゾーン、バッハ、ベートーヴェンなど、古典音楽を築いた人々の国…

シューカツっておかしいと感じたときに読む本

大沢仁・石渡嶺司『就活のバカヤロー ~企業・大学・学生が演じる茶番劇~』 (2008)面白いが建設的な話は何もない 企業は職業経験のない学生を評価しようとするから、学歴しか判断材料がなくなる。学生は職業経験がない中で、自己PRを行わなくてはならないか…

就活という世にも奇妙な制度

日本にはシューカツと呼ばれる古来よりの伝統行事がある。数え年にして22の若者が沐浴して、男は髭をきれいに剃り、女は髪を整え、身を清める。そして、男女ともに全身黒の伝統装束を身にまとい、リクナビフェスという地域一大の祭事に参加するのだ。この祭…

町田健『ソシュールと言語学 コトバはなぜ通じるのか』(2004)

2004年刊行。 ソシュールの言語学とその後の言語学の歴史を概説している。 ソシュールは、ある一つの単語の意味は、言語という体系の中で他の要素との関係性によって決まるということを指摘して、近代言語学の基礎を築いた。ソシュール自身は「構造」ではな…

大貫妙子 - Note (2004)

なんだかもう一枚紹介したくなったので、また書きました。 前の記事で、春の訪れに似合うアルバムとして大貫妙子さんのOne Fine Dayを紹介しましたが、Noteもまた春にとっても良く似合うアルバムです。 春になるとなぜかいつの間にか聞いている曲です。この…

大貫妙子 - One Fine Day (2005)

今日のように晴れた日は、なぜか自然と大貫妙子の曲が聴きたくなる。 気が付くとなぜか、聴いているといった感じだ。 彼女の歌は、雲一つない本当に晴れきった日にとても良く似合う。五月に入り、日々日が暖かくなるのを感じながら聞くのが非常に気持ちがい…

Jean-Jacques Rousseau 『孤独な散歩者の夢想』 (1782)

ルソーの遺作となった作品。 夢想とある通り現実と妄想の間を行き来するような内容で終始、ルソーの独白が続いていく。 ルソーは、一般的には社会契約論を唱えた社会思想家として知られているが、社会思想や哲学の他に、博物学、音楽理論、芸術論などの著作…

大島直政『イスラムからの発想』 (1981)

一般のイスラム教徒には、異教徒と理解し合おうという思想はない、ということを心得ておかねばならない―― 異文化相互理解の基本である「お互い理解できないということを理解する」という点にすら到達するのが難しいのが一神教の厳しい世界観であり、安易に「…

格差問題を食い物にする人たち その2

山田昌弘『希望格差社会』 (2004)*文明批評を根拠に語る経済問題 発表当時、非常に話題になり、かなり売れた本だが、内容自体は極めて粗雑で流行語を作ったということ以外には何の価値もない本だろう。 著者は現在の日本で格差が広がっていることに対して、…

格差問題を食い物にする人たち

三浦展『下流社会』 (2005)実態調査ではなく、意識調査 総中流化の「1955年体制」から階層化の「2005年体制」へと社会は変化している、というのが著者の基本的な認識だ。 だが、それを裏付けるためのデータはすべて階級意識の調査に基づいたものであり、生活…

朝日新聞特別報道チーム『偽装請負』 (2007)

企業の巧妙な脱法行為 2007年刊行。 偽装請負(委託)について朝日新聞が行った調査報道をまとめたもの。 日本では解雇要件が非常に厳しく、正社員の解雇や賃下げは実質的に不可能なため、雇用の調整弁として派遣が広く一般化してしまった。現在の派遣労働は…

城繁幸『7割は課長にさえなれません』 (2010)

2010年刊行。 著者は、日本の労働問題、格差問題の根本的な原因が、年功序列型の日本の雇用慣行にあることを指摘して、一躍話題となった城繁幸氏。 日本の経済成長力が鈍化していく中で、ジリ貧化していく正社員を皮肉ったような題だが、本書の内容は日本の…

橋爪大三郎・大澤真幸・宮台真司『おどろきの中国』 (2013)

異論反論は多いだろうが、社会学独自の切り口は非常に面白い 2013年刊行。著名な社会学者三人による鼎談。 前半は、社会学者らしく、ヴェーバー流の比較社会学的な見地から、中国社会の特徴を描いている。 社会学の理論は、ヨーロッパの近代国民国家を前提と…

Sigmund Freud 『戦争と死に関する時評』 (1915)

そしてこの戦争がもたらしたもの、それは幻滅である。 *世界大戦がもたらした幻滅 第一次世界大戦のさなかに書かれた論文。フロイトが、第一次世界大戦という未曾有の戦争に直面して、それがいかに衝撃的だったかが非常によく伝わってくる。 フロイトは、こ…

Sigmund Freud 『人はなぜ戦争をするのか』 (2008)

第一次世界大戦以降のフロイト後期の作品を集めた論文集。フロイトは、第一次世界大戦に直面して、人間の破壊的な欲望をまざまざと見せつけられ、それを契機にタナトスという死への欲動を理論化していく。その過程の作品を中心に編まれている。*外傷性神経…

桜の森の満開の下には

桜の樹の下には、ぶるーしーとが敷きつめられている! 桜の花が咲くと人々は酒をぶらさげたり団子をたべて花の下を歩いて絶景だの春ランマンだのと浮かれて陽気になりますが、これは嘘です。なぜ嘘かと申しますと、真っ青なシートと真っ赤な三角コーンを桜の…

池内恵『イスラーム国の衝撃』 (2015)

「独裁政権の暴力に頼っている限りは、過激派の発生は止まず、かといって過激派の抑制には、独裁政権を必要とする。このジレンマにアラブ世界は、疲れ切っている。」 本書は、2014年に突如として現れたイスラーム国(IS)の来歴とその思想的な背景を解説して…

電子書籍の表紙 その2

最近は電子書籍を購入する機会が非常に増えた。まだ紙の書籍の方が読みやすいのは確かだが、置き場や持ち運びを考えると、やっぱり紙の書籍を買おうという気がおきなくなる。読み捨てにしてもいいような本だけを紙媒体で購入している。 しかし、私のような電…

電子書籍の表紙

そういえば、何年か前、スティーブ・ジョブズの伝記が出版されたとき、日本語版の表紙の「醜さ」が話題になったことがあった。 Amazonなどで日本語版の表紙画像を見た海外のブロガーが批判したのがきっかけだったらしい。スティーブ・ジョブズは日本の禅精神…

週末起業のススメ

藤井孝一『週末起業』 (2003)起業への第一歩 2003年刊行。 10年以上前の本だが、今でも週末企業の基本的な考え方は重要なものだと思う。 会社に一度就職してしまえばそれで自分の人生は安泰という時代はすでに過ぎ去っている。終身雇用も崩れてきているし、…

吉本佳生『無料ビジネスの時代』 (2011)

無料ビジネスが広がる背景とその後の展開まで言及した良著 2011年刊行。 ここ数年、無料で利用できるサービスや商品が増えてきて、私のようなド貧民にはありがたい限りだが、企業はどうやってそこから利益を上げるのか非常に気になっていた。私自身は、企業…

堤未果『アメリカから<自由>が消える』 (2010)

2010年刊行。 9.11のテロから10年以上が経過した今でも、テロの影に怯え、国民への監視を強化していくアメリカの姿が描かれている。 アメリカの歴史を振り返ると、歴史的に重要な局面において、世論が政治を動かすのではなく、政府が世論を誘導するというこ…

巡回販売による被害をなくすために

*巡回販売の定義 前回の記事で地域に対して責任を持たない巡回販売が悪質化、犯罪化しやすいことを指摘した。 blogboyo.hatenablog.com 今までまったく野放しにされてきた巡回販売を法的規制の対象として検討すべき時に来ているのではないか。戦後の日本は…

悪質化、犯罪化する巡回販売

*ようやく始まった環境省による廃品回収業者指導 平成22年11月、ようやく環境省が、近年、詐欺や恐喝行為により社会問題化している廃品回収業者に対して対策を行い始めた。以下は、11月15日付けの時事通信の記事である。不用品回収業者に立ち入り検査を 自…

チョムスキーと脳科学

*言語相対論からチョムスキーの普遍文法論へ 言語が異なれば物事の把握の仕方が異なる――このような考え方は言語相対論と呼ばれる。 西欧諸国では19世紀から20世紀にかけて植民地が拡大すると、非西欧文明との接触に促されて、世界のさまざまな言語への視野…

酒井邦嘉著『言語の脳科学』 (2002)

チョムスキー理論は脳科学によってどこまで証明可能か 2002年刊行。 脳科学が言語処理に関する脳機能のどこまでを証明できているのか、当時の研究成果を解説している。言語処理における脳の機能局在、モジュール仮説、プラトンの問題など、脳科学が主要な課…

拡声機の商業利用に法的規制を!その2

*拡声機使用の公益性(笑) 前回の記事で、拡声機の商業利用に法的規制をかける上で、政治的あるいは法律的に問題になりそうな点を検討した。今回は、その社会的意義について検討したい。 拡声機を使用した商業行為を規制しようとする際、生活環境の保護と…

拡声機の商業利用に法的規制を!

住宅地域において拡声機やスピーカーなどを使用することは、明らかに異常な行為だ。しかし、日本ではそれが当たり前のように認められてきた。議会も行政も、廃品回収車や灯油の巡回販売など拡声機を使用しながら住宅街を徘徊して回るような世界でも類を見な…

拡声機騒音に関する条例を調べてみた

*生活音以外の騒音が溢れる国 街中には、近隣から発生する生活音、工事現場から生じる作業音、交通に伴う振動音など生活環境を破壊しかねない音が溢れている。これらの音も規制値を越えた音量が生じれば、騒音として認定できる。 だが、これらの音は、人々…

年功序列を考えるための読書案内

城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか?』 (2006)世界でも極めて特異な日本の企業体質 新規大卒入社で3年以内に会社を辞める社員の割合は、厚生省の発表では2000年度で36.5%、1992年度が23%なので90年代の間に1.5倍に増えている。 「若者はなぜ3年で辞めるの…

年功序列という日本を蝕む制度

*年功序列とは 年功序列は終身雇用と並び、日本型雇用の典型的な制度と言われ、大企業や特に官公庁で多く採用されている人事制度だ。だが、勤続年数を人事評価において最優先する人事慣行として広く捉えれば、中小を含めた日本の企業のほとんどに見られるき…

深夜営業は必要か?- すき屋の報道から考える

*深夜営業は必要か? 牛丼チェーン店すき屋を運営するゼンショーが、昨年度2014年の4月から12月期の連結決算が最終損益24億円の赤字になると発表した。昨年から、深夜の店舗運営を従業員一人ですべて行わせていたことが問題となっていたゼンショーだが、人…

横田増生『ユニクロ帝国の光と影』 (2013)

以前の記事で今野晴貴氏の『ブラック企業』を取り上げたが、その著書の中でなぜかユニ黒の名前だけが伏せられていた。名前が伏せられた理由は、出版元の文芸春秋社がすでに別の出版物において名誉毀損でユニ黒と係争関係にあるためのようだ。次のような記事…

今野晴貴『ブラック企業』 (2012)

*ブラック企業とは? 労働環境が著しく劣悪な会社…… そうした企業がネット上でブラック企業と呼ばれるようになったのは、2005年前後かららしい。2008年のリーマンショック以降からは、社会問題として徐々に認知され始めた。そして、このネットスラングとし…

廃品回収車などによる騒音被害には110番を!

廃品回収車の騒音に関して、中野区に問い合わせてみた。生活環境分野環境公害担当の方のお話では、廃品回収車による騒音に関しての苦情は非常に多いらしく、毎年100件を超える苦情が区に寄せられるらしい。そこで区の方でも取締りのための巡回を実施している…

廃品回収車による騒音被害

*騒音を撒き散らす廃品回収車 大音量を撒き散らして毎日のようにやってくる廃品回収車。「いらなぐなっだぁー、でぇーぞーこぉ、えぁこぉん…」とおっさんの濁声から「こひぃらふぁ、ふぁいひぃんくわいしゅ~しゃれぇ~す。」と甘ったれた感じのアホな女の…

畑村洋太郎『起業と倒産の失敗学』 (2006)

企業倒産の事例集 成功に法則はないが、失敗には法則がある―――この言葉通り、企業が破綻した事例から失敗の要因を明らかにしようと試みた本。原著は2003年の刊行なので、2000年前後の破綻事例が紹介されている。 企業破綻にもさまざまな類型があり、その要因…

金子哲雄『「持たない」ビジネス 儲けのカラクリ』 (2012)

アメリカの後追いでしかない経営手法 2012年刊行。 市場の変動が激しく先の見えない経済状況の中では、資産を保有することがむしろリスクになるということを説明した本。 個人にしろ会社にしろ資産を保有すればそれは固定費となり、自由な支出を制限させ、さ…

一橋総合研究所『「身の丈」起業のすすめ』 (2005)

起業に対する考え方をもっと柔軟にするために 「身の丈起業」とは非常にいい言葉だと思う。 起業というとかなりな資本金を準備し、非常に高いriskをとるものという印象があるが、むしろ将来性が不透明な経済状況の中では、risk hedgeとして起業を考えるべき…

若宮健『パチンコに日本人は20年で540兆円使った』 (2012)

2012年刊行。 著者は、日本のメディアが一切、報道しなかった韓国でのパチンコ全廃をいち早く取材し、著書としてまとめた若宮氏。本書では、パチンコをめぐる日本の現状を解説している。*世界最大のギャンブル大国日本 マカオでのカジノ業界の売り上げは、2…

若宮健『なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか』 (2010)

次回作に期待*日本で報道されなかった韓国のパチンコ全廃 パチンコ産業では韓国・北朝鮮資本がほとんどを占めていることは、一般に良く知られていることだが、韓国がパチンコを全廃したという事実はこの書籍が出版される以前はほとんど知られていなかったよ…

丸山眞男・加藤周一『翻訳と日本の近代』 (1998)

日本の近代化を支えた翻訳文化をめぐる対談集。良くも悪くも日本の近代化は翻訳を中心に進められた。その思想史的な意義と功罪をめぐって、戦後日本を代表する思想家二人による対話が交わされている。以下はその読書備忘録。*翻訳文化の始まり 日本の近代化…

外山滋比古『日本語の感覚』 (1975)

前著『日本語の論理』において欧米言語と日本語の特質の差を名詞構文と動詞構文の差として特徴付けた外山氏だが、本書ではこの全く性格を異にする欧米言語を日本人がどのように受容していったのかその歴史に焦点が当てられている。 欧米言語は、思考の中心を…

外山滋比古『日本語の論理』 (1973)

*西欧語との対峙 著者の外山氏は1923年、大正12年の生まれ。第二次大戦が始まる直前から戦中にかけて英文学を学んでいる。 この頃はまだ、日本語は非論理的であるという明治以来の根強い言語観が残っていた時代だ。当時、外国文学を学ぶということは、一方…

茂木健一郎『クオリア入門』 (2006)

私たちの心の中のすべての表象は、クオリアという単位からできている。 クオリアとは心の中で感じ取ることのできる質感のことだ。心の中で感じ取っている直接的な経験と言い換えてもいい。 この質感を感じ取っている心の中の経験が、脳内のシナプスの働きの…

生田哲『よみがえる脳』 (2010)

神経新生とは何か*カナリアの歌から カナリアは、毎年春になると新しい歌を歌うそうだ。他のほとんどの鳥は、その鳴き方を一生を通じて変化させない。しかし、カナリアだけは、毎年春に新たに歌を覚え直すらしい。 カナリアの歌う歌は、毎年変わり、以前の…