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読書亡羊

気ままに読書、気ままな読書日記

電子書籍の表紙

 そういえば、何年か前、スティーブ・ジョブズの伝記が出版されたとき、日本語版の表紙の「醜さ」が話題になったことがあった。

 Amazonなどで日本語版の表紙画像を見た海外のブロガーが批判したのがきっかけだったらしい。スティーブ・ジョブズは日本の禅精神に傾倒していた。単純さの中にある美しさを追求し、それをアップル製品のデザインに活かしていた。今回の伝記が書かれるにあたってスティーブ・ジョブズは著者に何も注文を付けなかったらしいが、唯一注文を出したのがこの表紙だった。真正面を見据えたポートレイト。書名と著者名以外、余計な情報を一切、排したきわめて簡易な構図。まさにアップル製品を象徴する表紙だった。

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 ところが禅の精神の本場である日本で出版された表紙には、彼の意向と禅の精神に反するがごとく、余計な宣伝文句がベタベタと書き連ねられていた。海外のアップルファンからは、日本人はまるでスティーブの精神が理解できていないとネットを中心に多くの批判がなされることになった。

 普段、禅だとか様式美など考えたこともない多くの人が、海外の批判にはすぐに便乗し、日本からもブログやtwitterなどを通じて日本語版を出版した講談社に対して批判が寄せられた。

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 しかし、これは海外のアップルファンの誤解であり、この宣伝文句は帯に書かれたものだ。この帯、日本の出版文化に独特のもので海外ではほとんど見かけない。たまに見かけるがそれでもやはり一般的なものではない。Amazonなどの画像は帯まで映しているからこうした誤解が広がった。この帯をはずせば、「それなりに」単純美を表した構図になるのだ。

 海外からの誤解を生んだこの「帯」。。。日本の本にはどれにもついているが、ほんとにいるの、これ?実際邪魔だし、見た目的にも良くないから個人的にはなくしてほしいと思っている。
 日本の書籍にはほとんど帯が付いているが、そんなに宣伝効果があるのだろうか。ほんとに意味があって付けてる、出版社さん?スティーブ・ジョブズの伝記に限らず、すべての本に対して装丁の美しさを損なっていると思うは私だけ??週刊誌の中吊り広告のごとく陳腐な見出しで、ベタベタと余計な宣伝文句を書き連ねていて、何だかかえって興ざめする。そもそも物理的に邪魔だ。私は買ったらすぐに捨ててしまうが、ごみが増えるだけだといつも思う。

 紙の書籍はそれでも帯を捨ててしまえばそれでよいが、問題は電子書籍の表紙だ。日本で出版される電子書籍の表紙には、なぜかほとんどこの帯が映りこんでいる。日本の出版社は、中身が確認しにくい電子書籍にはこの帯の文句は必要不可欠とでも考えているのだろう。しかし、同じ内容の文が商品紹介の欄にも書かれているのだから、表紙画像にまでベタベタと宣伝文句を書く必要などないはずだ(それも大概が大げさ、かつ陳腐でくだらない文章だ)。

 電子書籍の表紙画像は切り替えることが出来ない。買ったらそのままずっとその陳腐な宣伝文句とともに自分の電子書籍ビューアーに表示され続ける。アップルが提供している電子書籍ビューアーのibooksは、本棚のように表紙を並べて表示させることが出来るが、そこに日本語書籍の帯つきの画像が混ざってくると非常に全体が醜くなる。
 こういうところでもやはり日本人というのは、スティーブ・ジョブズの美意識も禅の精神も理解していないのだ、と思う。書籍の電子化を非常に強く望んでいる私でさえ、表紙画像に帯が移りこんでいるとそれだけで買う気が失せる。こうした人間は日本では少数派なのだろうか。出版社からは完全に無視されている。

 海外のアップルファンは、スティーブ・ジョブズの伝記の帯画像を見て、勝手に勘違いして日本叩きをやっていたわけだが、しかしそれでもその批判のすべてが的外れだと思わない。本に帯をベタベタと付けるのは今でも変わっていないし、何よりも電子書籍の表紙画像に帯を載せるという馬鹿なことをやっている。

 ましてや今の日本人に禅の精神などあるわけがない。スティーブ・ジョブズも禅の精神と今の日本人の精神が、なんら関係のないことは十分理解していただろう。それにもかかわらず、多くの日本人は、アップルの製品には日本の禅の精神が活かされている!などと言って嬉々としているわけだ(しかも若干得意げに!)。そして、スタバでマック開いてドヤ顔している。
 しかし、スタバを一歩外に出れば、街路はチェーン店のド派手なネオンと看板で取り囲まれ、プラスチック製の幟りはそこかしこに置かれ、電柱と自動販売機が乱立している。アップル製品には日本の禅の精神が生きているなどといってドヤ顔している日本のアップルファンは、こんなゴミだめの様な街並みが広がっていても、まるで平気でいる。気にする素振りさえない。西欧崇拝で「おしゃれ」な「とれんど」にはすぐに飛びつくくせに街並みや公共空間の美意識にはまるで無頓着なこの矛盾した意識の日本のアップルファンに、いまさら禅やら様式美やら言う資格があるのかい!

 壁から床に至るまで広告をベタベタ張り付け、店員一人ひとりが拡声機持ってぎゃーぎゃー騒いでる日本の下品な家電量販店でアップル製品売ってること自体、滑稽以外の何物でもない。東京の街並みほどアップルの製品が似つかわしくない街も他にないだろうし、それと同じように、日本の電子書籍ほどipadで表示させるのが似つかわしくないものも、またないと思う。

Steve Jobs

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スティーブ・ジョブズ I

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スティーブ・ジョブズ II

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